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「黒の劇団」

ホテルのデッキから外を見ていたら、遊歩道に出ている二人が見えた。

こんな深夜に熊ひげはどこへ電話しているのだろう。

DSC02873.jpg


あごひげはそばで話の内容を聞いているようだ。

DSC02872.jpg



この二人とはこのビーチに着いた最初の日に会っている。


海をぼんやり見ていた二人に、

私は日本人に会った気安さで、「こんにちは」と声をかけた。

「ここらにWi-Fiが使えるホテルを知りませんか」

「俺たちが泊まってるホテルはOKだよ」と熊ひげ。

「そこいくらですか」、「10,000ルピー」、、、、予算オーバーでとても泊まれない。

「ここは長いんですか」、「いや、まだ1週間くらいかな」とあごひげ。

「あとどのくらいいるんですか」、熊ひげが「さあ、あと2,3週間かな」

気ままに長い休暇を取れて、高級ホテルに泊まっているとはリッチな青年たちだ。

どんな仕事をしてるんだろ?個人投資家、トレーダー?

何となく日本人とは話をしたくないような雰囲気があり、お互い名前も名のらないまま、

「1,000ルピーが予算なんで、自分で探してみます」と早々にその場を離れた。

重いリュックを背負ってホテルを探した、それが5日前。



私は条件に合うホテルを浜辺に面した場所に決め、連泊している。

朝になったらここを出ようと決めていたが、今はこうしてデッキから深夜の二人を見ている。




あの話は本当だろうか、、、、、、、??

昨夜バーで二人に再会し、あごひげから聞いた話。



「大分リッチな旅行をしてるけど、仕事は何をしてるんですか?」

「そちらさんは?」と熊ひげ、「今はリタイヤしてますけど、去年までは機械屋です」


かなり酒が入っている様子のあごひげが熊ひげの代わりに答えた、

「俺たちは二人とも役者の卵だよ。所属しているのは「黒の劇団」って言ってね、

俺は金をタップリ貯めこんでるばあさんの孫の役、兄貴は刑事役が多いかな」

「おい、余計なことしゃべるんじゃないぞ、あごひげ」

「かまいやしないよ、兄貴。おっさんは機械屋だし、もう会うこともないし、

俺たちの話をまわりにいるインド人が聞いてても、中身なんか知らないぜ」

「この酔っ払い野郎が、、、、」



ムッとしている熊ひげに構わず、赤ら顔のあごひげが話を続けた。



劇団の幹部からリストをもらってね、電話をかけまくって演技の練習をするんだ。

俺はばあさんの孫の役だから、

「おばあちゃん、俺だよ、オレ、オレ!!」

「ダイスケかい、どうしたんだい?電話なんか滅多にかけてこないのに。

それにいつもと声が違うみたいだけど?」

「ああ、風邪ひいて喉がガラガラなんだ。」 、実際にガラガラ声。

次に演技力が試される。泣き出しそうな声で続ける。

「そんなことより大変なことになったんだよ~~~、おばあ~~ちゃ~~ん!!」

「どうしたんだい?泣きそうな声出して」

「自動車をぶつけて、相手に大けがさせちゃったよ」

「お前は大丈夫なのかい?」

「ああ、俺は大丈夫。相手は頭を複雑骨折して、顔がつぶれて、両耳がちぎれてる」

、、、、、、、それじゃあ、もう完全に死んでる、、、、、

「おやまあ、おやまあ、それは大変だ」とおばあちゃんはオロオロ声。

「自動車で人身事故を起こすと、うちの会社うるさいんだよ」

「えっ、トヨビシ自動車はそんなにうるさいんかい?」

機転をきかして役者のアドリブ、さっそく会社の名前をセリフにいれて、

「そうなんだ、トヨビシはうるさいんだよ。この前もうちの課長が人身事故をおこして、

佐渡に島流しになったんだぜ」

「お前がそんな事になったら、嫁のピンコが悲しむよ」

「俺、今警察に来てるんだけど、事故はなかったことにしてくれそうなんだ、

交通課の人に代わるから話を聞いてよ」

ここで熊ひげがあごひげから電話を受け取って、

「あああ、ダイスケ君のおばあちゃんですか?」

「あっ、はい」

「ええ、、、私は、エヘン、湾岸警察署の交通課刑事、青島と言います」

、、、、、、、交通課に刑事なんかいたかな?、、、、、、、

「あっ、あっ そうですか。何かダイスケがとんでもないことしたようで、、、」

「そうなんです。私がダイスケ君の事故報告書を書かなきゃならないですが、

全面的に加害者、いや、ダイスケ君に非があるので、へたすると刑務所行きも覚悟しないと」

「ひええええ~~~」、ばあちゃん、命が3年も縮まったような声で叫んだ。

「おばあちゃん、幸いなことに被害者の方がこの場で示談にして、

事故はなかったことにしても良いとおっしゃってるんですよ」

「ヒッヒッヒ、それは助かります。ダイスケが会社を首になったり、

刑務所に入らなくてもすむなら、なんでもします!」、と電話の向こうでニタリとしたが、

顔は必死そのもの。

「そこです、おばあちゃん!!そこなんです、おばあちゃん!!

被害者は、あの携帯会社Badbankの重役さんで、サギさんと言う方です。

壊れた車は最高級の外車、パンツですよ。

医者のかかり、車の修理代、それに会社を休んでいる間の役員報酬を全部合わせて、

示談金として800万円もらいたいと言ってます。どうですか、おばあちゃん」

「嫁のピンコには内緒にしてますが、それくらいならすぐ準備できますから、

ぜひ刑事さんから穏便に済ますよう、話を進めてください」


「そうですか、それでは事故報告書は書きませんから、示談金を準備してください。

明日の10時に、Badbankの重役室秘書課長のモチニゲさんという方が

お宅まで取りに伺うそうです。その方に現金を渡してください。

振込みされると奥さんにばれるから、サギさんは現金を希望されています」

「ヒッヒッヒ、ほんとに助かります、刑事さん。現金で準備しますから大丈夫です。

あの、ダイスケと代わってもらっていいですか」

「ああ、おばあちゃん、助かったよ、これで首にもならないし、刑務所にもいかずに済んだ」

「いいかいダイスケ、ピンコには内緒にしておくんだよ。あの鬼嫁が知ったら

遺産相続がどうの、あとどのくらい貯めこんでるのよと、うるさいからね」

「分かったよ、おばあちゃん、母さんには内緒にしてく。

でも、ほんとに助かったよ。仕事で1週間は帰れないけど、すんだらすぐお礼にいくよ」

「そうしておくれ、ばあちゃんは独り暮らしだから、お前がきてくれるのはいつでも大歓迎だよ」

「必ず行くから待っててね」

「あいよ、あいよ、待ってるよ」 電話の向こうでおばあちゃん、安心して満足顔。



役者のギャラは決まりがあってネ、上演収入の1/4、つまり200万円というわけさ。

俺と兄貴で100万づつ山分け。

上演回数は少ないけど、けっこう収入があってね、まあ月平均400万円ってとこかな。

、、、、そんなに収入があるなら休暇も取れて、高いホテルにも泊まれると納得した、、、、、



あごひげは酒が入ると、ぺらぺらと口が軽くなるが、

昼間、レストランで見かけた時はだまって難しそうな本を読んでいたし、

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夕方、浜辺で見かけた熊ひげは健康的なサーファーになっていた。

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「黒の劇団」で役者をしている時以外は、案外どこにでもいる好青年なのかもしれない。



*************************************

ここまで書いて、私こと、新進気鋭作家の松本礼張はパソコンの手をとめた。

夜中の3時に蚊にくわれて目が覚めた。それからずっとデッキのパソコンの前にいる。

昨夜見た二人の姿からイメージして、「黒の劇団」と題した小説を書き始めが、

、、、いや、いや、まったくの駄作だ。いつもの格調高い文章になっていない。

「ヒッヒッヒ」とか「ひえ~~~」とかセリフに入れて、これではまったく筒井康隆ではないか。


朝6時になり、少し明るんできた。早出の屋台がホテルの前に出たので、

ココナッツジュースを買って飲んだ。

DSC03030.jpg


ジュースを飲んで頭がすっきりしたところで、考え直した。

こんな筒井康隆的小説はボツにして、

グリーソン出版から依頼されている「黒の放浪記」の続きを執筆するとしよう。


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黒の放浪記 予約しました。

No title

お久しぶりにコメントをいただきました。

アリカイナのマチヤ将軍に拉致されたか、
人身事故を起こして島流しにされているんではないかと
心配しておりました。

壊れたスマホが開けないので、
平賀さんの携帯の番号を教えてください。

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Ray次郎

Author:Ray次郎
越後生まれのRay次郎。
リタイヤを機に
あれこれと始めた
後半人生の旅の記録

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